出展企業側の攻勢

「うちはアルミサッシをつくっている会社ですから、住宅ということで一番ですね」「ちょっと待ってくだきいよ、うちは装飾品ですよ。どこになるんですか?」。初日からため息が漏れたが、「次回、もう少し話し合って、ストーリーを練り上げましょう」と、何とかその場を収めた。というか、逃げ出したのである。ところが、出展企業側の攻勢はますますひどくなり、会議室の中だけで終わらなかった。夜中の二時、私の宿泊先であるホテルのドアの下から、スーツと白い封筒が差し込まれる。何だろうと、引き抜くと、親書と書いてある。封をあけると、「○○社を、是非とも一番目のブースにしていただきたく、よろしくお願い申し上げます」などと書かれている。カサッという音に、ふと気がついて、足元を見ると、もう一通の封筒の頭が隙間からのぞいている。ドアを開けると、人影はすでにない。やられた。宛名も差出人も、何も書かれていないもう一通の分厚い封筒が、ドアに押されて転がっていた。現金である。若い私は、なんて無礼な、なんて人をなめたまねをするんだと頭にきて、親書を差し込んできた企業の担当者に怒鳴り込んだ。ところが、彼は澄ました顔でこうのたまった。「たしかに私は、親書を差し入れました。名前も書いてあるでしょう。でも、もう片方のは存じませんよ。いったい何が入っているんですか?」と、こうである。相手のほうが、一枚上手だったのである。いや一枚どころではない、百戦錬磨の兵だ。