審査コミッショナー
「あっ、これ僕のですよ」、「だろ、あのときのコンペでボクが選んだんだから、間違えるわけないんだ」。浜口先生は、審査コミッショナーだったから、覚えていてくれたのである。いまは、政府館の全体プロデューサーである。手に入れた資料に目を通して、不審に思ったのだろう。ただ、あの頃は人手不足で、力のある若手は、あっちからもこっちからも目をつけられて引っ張りだこだ。現に、年端もいかない私も、生田先生と浜口先生、両方のお手伝いをしている。二股かけているだけでも忙しいのに、もう一人手伝っているのか?まさかそんな。そう思われたに違いない。それで、単刀直入に聞いてくれたのである。アイデアを盗まれただけでなく、身に覚えのない疑いをかけられ、おおいに口惜しくも悲しい気持ちになった。そんなやりとりをしていると、生田先生が通りかかられ、資料をのぞき込むと、「君、K君とどういう関係なの?」と言う。「いや、全然関係ない。会ったこともないんですよ」、私がきっぱり否定すると、珍しく不快をあらわにした生田先生は、「それじゃあ、これは盗作じゃないか。天野君、これは抗議すべきだよノ・」と、声を荒げた。実直な生田先生は、曲がったことが大嫌いという人である。浜口先生も評論家として、知的所有権侵害の問題には、早くから心を痛めておられたから、「とりあえず、K氏に会って、事情を聞いてごらん」とおっしゃる。そのときになって、私はことの重大さに気がついたのだ。