芸術家の人間性

私は、あらかじめ考えてあった順番を、絵にしたものを見せた。朝霞のなかで、目覚める家、食卓には魔法瓶。オフィスには、椅子やデスク。帰宅後は、レジャー用品。最後は夢のある貴金属だ。テーマを決めてBGMを流す。作曲は山本直純氏だ。どうしても不利な場所と思われるところには、凝ったディスプレイ・デザインを提供した。この時私は、本当に人の生活の機微を真剣に研究し学んだ。今こうした経験が住宅設計、とりわけ住宅のリフォームなどに生かされているのだと思う。リーダーシップを発揮して、目に見える形を提示すると、みんな理解してくれた。大先輩方のディスプレイ・デザイナーの皆様、特に田中健三先生にはおおいに助けられた。しかし、多分に髭の威力はあったと思う。それ以来、私は髭を剃れなくなってしまった。たった、一度の例外だけをのぞいては……。■芸術家の人間性。万博開催に向けて、慌ただしく走り回っていると、ある日、浜口先生から呼び止められた。「ちょっと天野君、君、忙しいのに○○館も手伝ってるの?」、「えっ?いいえ、どうしてですか?」、「えっ、じゃあ、君、知らないと言うのかい?」。浜口先生は怪諦な顔をして、一枚の写真を見せてくれた。そこには、私が万博パビリオンのコンペティションで優秀賞をもらった、あの、蓮の花をイメージした近代農業館にそっくりなデザインの建築物があった。それは、某大手企業のパビリオンで、当時まだ若手だった有名建築家K氏の手によるものとなっていた。